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#140 雀と鴉

きのう

電線の張替工事があって

声が途絶えた

それからというものの

すずめの親鳥が

トランスのあたりをちょろちょろしている

巣は

除去されていたよ

それから

ふだんはこの街にいないはずのからすが

きのうはとてもうるさかった

すずめの親鳥は

餌をくわえたまま放心している

もうすぐ巣を

巣立つはずだったおおきなこどもたちのために




 

150623「亡くし仔」


 
Posted by 凛々椿 (14:51) | #131-#140 | - | - |

#139 アセンブリ

最後の日に神がのたまわり文字を走らせる

全ての血と肉や

まだ見ぬ命はあらゆる予言を生むだろう 

すべては若者となり

すべては具現化し

すべては老人となり

すべてはふやけた夢を見るだろう

一方 我々は知るだろう 

神が実はうわのそらで

掻きむしる炎は太陽に波打つ黒煙は暗闇に交わる血は月に変わることなど

ないのだと

運命に署するものはいつの日か救われると

人々はそう願い

輝かしい日々と淫らな欲に翻弄され

きれいなことばを整列させ正義で邪魔者を消し

美しい死には丁寧に頬ずりをしてきた

世界のいろんな合図は

神のせいのはずだったのに

願うとは なにか

背負うとはなんだったのか

それは もう知らなくてもいい

とっておきの夢だ

さあ戦いをはじめよう

さあ あいつらを駆逐しよう やっつけよう 

気持ちの悪いあいつらを







150623「アセンブリ」

Posted by 凛々椿 (14:50) | #131-#140 | - | - |

#138 這性動物


はたしてこれは幸せなのか

休みの日には朝にどか食いをしておなかをこわし

追い打ちをかけるようにビールをあおり

家のことはそこそこに

気がつけば一日中NHKを見ている

いつもなら国会中継の日にはチャンネルを変えるのに

いまやそんな気力もないらしく

おかげで政治のことにもずいぶん詳しくなった

(あのひとたち 仕事がおそいと思うのは私だけかしら)

夜になるとまたビールをあおり

やがてクイーンサイズの嘘のかたまりが

私の動きを封じ込めて

すべてをなかったことにする

愛してる

ありがとう

どんなことばにも

うらがあるにちがいない

私がだれも愛さないように

あなたがだれも愛さないように

そうしてまた新しい一日がはじまって

ローズマリーを剪定し

ビールのプルタグを手前にひいたところに

一本の電話が入り

ああ 今日は 仕事だった

(私は 仕事が遅い どころのはなしじゃなかった)

身支度はそこそこに

でもビールは 麦味のチェイサーだから と

それはそれは

おいしくいただきました





150623「這性動物」

Posted by 凛々椿 (12:43) | #131-#140 | - | - |

#137 橙の月


いやだなあ

濡れると冷たいから

多分ね

綺麗に見えるようになったんだよ

彼は言った

月が綺麗なことはむかしから知ってる

けれど

そうだね

色んなことが過ぎて

声も失った

あの時の月といまの月は 同じだけれど同じじゃない

疲れて見上げる空

望みを託して見上げる空

失って見上げる空

欲しいと叫べず見上げる空 

雨の匂いがする

早くおうちに帰ろう

みいんな消して 肌をつなごう

そんな未来を想像しようよ

橙の月が覗くうちに

北風が雲を 広げてしまわないうちに






141213「橙の月」

Posted by 凛々椿 (07:06) | #131-#140 | - | - |

#136 ばけもの


まだら模様のその生物は

実はとんでもない起爆装置なんだ

体を直角に反り

顔をこちらに向け

目を合わせた人を爆発物に変えてしまう

その姿を思い出すだけでも小さな爆発を繰り返して

体にどんどん穴が開いていくんだ

ひどいときには死んでしまうし見知らぬ人をも巻き込んでしまう

とてもおそろしい生物だよ

まだら模様は絶滅危惧種で

奇妙な容姿は見世物にふさわしい

誰もがおもしろがって仮想世界上に画像を投稿したがるんだけど

ある日

大切な友だちがまだら模様を公開したんだ

きのう友だちがコレと目を合わせちゃったんだってさ

こわいね気をつけようね

って

(笑)

なんて書いちゃってて

僕は退屈な満員列車でいつものように仮想世界を覗き込んでた

ぷつ

ぷつん

まるで縫い糸が切れるように

ぷつん

ぷつ

鳴って

そして僕は大爆発を起こしたんだ気づいたら売女になってたよ

笑っちゃうよね!

そんでもって つぎはぎに塗ってもらった唇で

赤毛のロングヘアを噛み噛みしながら

ぶらーんぶらさげた両目でひとりずつやっつけてるんだー

逃げる首根っこをひっつかんで

もぬけの胴体でね

腕だけはしゃかしゃか動くもんだからみんなけっこう笑うんだよ

突然泣き出すけど

そのたびに思うよああなんていうか

平和だな ってね





141127「ばけもの」

Posted by 凛々椿 (07:06) | #131-#140 | - | - |

【五行詩】ひばな


ひぐれ ゆるやかなひかり 

花火のか遠き子音 

煙りとかくれんぼする四日月に ああ

そこにおるんね と あいそ笑う 

なつかしいね ともに見たあの日の火花は ほんの少しだけ本当だった 









140802「ひばな」

Posted by 凛々椿 (18:37) | 5 Logos | - | - |

#135 It's mourning




小さな町が海に飲まれた日 

とても嬉しかったわ

だって数年前 あの町の若者たちは

女を車に閉じ込めて何日も連れ回したのだもの

有り金を奪い

空腹を精液で補わせて

あの中の一人ぐらい死んだのかしら

復興を祈ります なんて

まるで嫌み










140717「It's mourning」

Posted by 凛々椿 (18:32) | #131-#140 | - | - |

#134 drop90%

 

drop90%

雨が降るでしょう

外出の際は傘をお忘れなく



あ神よ

なぜこの世に傘をもたらしたか

僕は憎むよ

傘ほど邪魔な物質を僕は他に知らない

夕暮れににわか雨が降るかもとなれば傘を持つか持たぬかで逡巡し

かといって折りたたみ傘は最悪だ

そっくり返るのをなだめつつ広げたら最後

たたむのにどれだけの時間と労力を費やすだろう

おまけにうまいこと元に戻せない

電車の中でたまに開いちゃったりするし

まったく人生じゃないんだからそんな面倒はごめんだ

面倒なのは人生だけでいい

そもそもずぶ濡れになると視線が痛いのは何故だ

なぜ濡れてはいけない

なぜ濡れると哀しい顔をする

なぜ犬ですら濡れ鼠を切なく見上げるのか

だいたい犬に合羽なんて……

可愛いから許すけど

もういっそ傘なんて存在しなければいいんだ

みんな濡れてしまえばいい

そしたらブラジャーのラインはくっきり映えるし

厚化粧もナチュラルメイクに早変わりするし

もしかしたら

僕のこんな愚痴だらけのやらしい性格も

よくなるかもしれないだろ?


 

言いすぎた

ごめん

あと今にわか雨降ってるんだけど

60cmのジャンプ傘さしてる










140715「drop90%」

Posted by 凛々椿 (19:31) | #131-#140 | - | - |

#133 夏非



 

どぉ ん 

演習の大砲は

拍動を揺るがす違和への口火

冴え擦る木の葉

雨上がりの(霄の)においは

知らないはずの陸戦を思い出させた

 

涼風はとうに春を諦めている

雪をあしらった峰を入道雲が頬張るさまは

まるで氷菓をねだる子のように微笑ましく

けだもののように直線的で

裾野の軍墓群は

その咀嚼を見つめている

それは静かな、そう、

とても、とても、静かだ、

地に沈み

不可避の歴史を食み続ける

 

散り、散りと撥ねる陽射しはおなごの色艶にも似て

等しくひと夏を恋う

いつか、死者は照らされるだろうか

新たな地獄を、数えるだろうか

私たちはいつだって瓦落苦多のように嘆くばかり

鳥は

鳴くばかりだ








140627「夏非」
Posted by 凛々椿 (00:12) | #131-#140 | - | - |

#132 Size:L

 

甘える

それは奮い立たせる刺激がない、もしくは、そんなもの、要らないから


 

私は、何かになろうという気持ちがないし、あなたは

病気を治し、社会へ戻ろうという気持ちがない

似たようなふたりが

ぼんやりとカフェで時を過ごすのは、ごく、自然なのかもしれません

お互いの甘えをけなしあいながら

ときに背伸びして、

我、大層な人物に成り得る存在也、存在也!

と気取って、

こそりと笑っているのです











140424「Size:L」
Posted by 凛々椿 (23:48) | #131-#140 | - | - |